東京五輪・パラリンピック組織委の理事会に臨む高橋治之元理事(右)
左は森喜朗元会長
=2017年2月、東京都港区
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オリンピックをはじめとする国際大会の招致や運営が不正の温床となってきたことは、残念ながら事実である。
そうした悪弊が毀損(きそん)してきたのは競技の感動や興奮であり、スポーツの価値そのものだ。スポーツ界は今、透明化を目指す改革の途上にある。この機に弊害の残滓(ざんし)を断たなくてはならない。
東京地検特捜部は26日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事の自宅などを受託収賄容疑で家宅捜索した。
高橋氏が代表を務める会社は、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」とコンサルティング契約を結び、計約4500万円を受領していた。組織委理事はみなし公務員と規定され、高橋氏へ渡った現金が五輪事業に関連した便宜供与の見返りだった疑いがある。
高橋氏は大手広告代理店「電通」元専務で、サッカーの2002年ワールドカップ日韓大会の招致当時から、世界のスポーツ界で広く名を知られた人物だ。
「AOKI」は高橋氏に声をかけられて組織委とスポンサーシップ契約を結び、「オフィシャルサポーター」として、エンブレム入りスーツなど公式ライセンス商品を販売した。高橋氏は取材などで容疑を否定しているが、疑われて当然の経緯だともいえる。
高橋氏の会社には、東京五輪招致委員会から総額約8億9千万円の振り込みがあったことも判明している。東京大会招致では、国際オリンピック委員会(IOC)元委員の家族に多額の現金を渡した疑いがあるとして、フランス司法当局が招致委トップで日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒和氏を聴取した。
竹田氏は平成28年、参院文教科学委員会に招致されて疑惑への高橋氏の関与を問われ、これを否定していた。高橋氏の会社に渡った多額の資金の使途については、招致委が解散していたこともあり、詳細は明らかにされていない。
高橋氏側への強制捜査について磯崎仁彦官房副長官は26日の会見で「必要に応じ組織委で適切に対応する」と述べた。だが組織委は6月30日、すでに解散している。疑惑解明への意欲がない証左ではないか。
容疑の有無にかかわらず、国、東京都、スポーツ界は真相解明への責務から逃れられない。
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2022年7月27日付産経新聞【主張】を転載しています